2017年7月12日水曜日

便秘・下痢の基礎知識!



(2017.07.12)

● 食べてから便が出るまで!


 ・ 食物は、通常24~48時間(1~2日)ほどで便となり排泄される。
 ・ 食べた物は、胃・小腸で消化・吸収される。
 ・ 大腸には消化しきれなかったもの(未消化物)が流れてくる。
   大腸で水分・電解質を吸収し「便」を形成。

 ◆ 水分の吸収不十分、腸管運動が過敏→ ゆるい便または、下痢
 ◆ 水分を過剰に吸収、腸管運動が停滞→ 固く出にくい便、便秘

● 快適な便通を保つポイント


 ① 適量の食物繊維の摂取
 ② 水分の十分な摂取
 ③ 腸の働きを良好に保つ

● 便の成分


 便の成分=水分(70~80%)+ 固形物(20~30%)
   ・固形物 = 不消化物 + 腸内細菌残骸 等
   ・不消化物:食品中の食物残渣(食物繊維等)が主体

 *食物繊維には以下の2種類がある
   ・『水溶性食物繊維』・・・・ 水に溶けるもの
   ・『不溶性食物繊維』・・・・ 水に溶けないもの


● 水溶性食物繊維


 ・ 特徴:水に溶ける。“ねばねば”と“さらさら”するものがある。
 ・ 働き:① 腸内環境を整える(腸粘膜への栄養)
      ② コレステロール値・食後血糖値の上昇抑制
      ③ 軟便形成を促す 
 ・ 食品:果物(キウイフルーツ、りんご、苺、 桃、 みかん等)
      繊維のやわらかい野菜(人参、ほうれん草、大根、玉葱、南瓜、トマト等)
      芋類(じゃが芋、里芋、長芋、大和芋等)

● 不溶性食物繊維


 ・ 特徴:水に溶けず、水分を吸収して膨らむ
 ・ 働き:① 便のかさを増し、便通を整える
      ② 有害物質を吸着し、排泄を促す
 ・ 食品:繊維の固い野菜(*牛蒡 筍 蓮根 茄子 ニラ セリ セロリ トウモロコシ ゼンマイ等山菜類)
      *不溶性のみならず、水溶性食物繊維も多く含まれています。
      さつま芋
      きのこ類 (椎茸 えのき茸 しめじ エリンギ 等)
      豆類(大豆 納豆 おから 小豆 等)   
      乾物(玄米 ライ麦 切干大根 干し椎茸 等)



● 便秘とは


 「便秘」とは排便が順調に行われず、3日以上排便がないか、毎日排便があってもすっきりしない状態をいいます。
 便秘になると腸内の腐敗菌が増えて腸内細菌が正常な働きをしなくなり、おならが臭くなったり、肌荒れ、吹き出もの、食欲低下、肥満、高脂血症、腰痛、冷え性といった全身的な体調不良や病気をもたらします。
 また大腸がんの原因にもなることもあるので注意が必要です。

 便秘は生活習慣の乱れによって起こることも多いのですが、詳しく調べてみると実は原因も様々で、別の病気の症状として現れることもあります。

 ① 一般的な便秘の原因
   1. 水分不足
   2. 食物繊維摂取不足
   3. 腸の動きが弱い
    ・運動不足
    ・過度の緊張やストレス
   4. 便意の慢性的な我慢(排便反射の鈍化)

 ② 《 がん患者さんの便秘の原因 》
  *重症化すると腸閉塞(イレウス)になる恐れがある。
   1. 食事・水分摂取量の低下
   2. 運動量の不足
   3. 薬剤の副作用 (抗がん剤・吐気止め・痛み止め等)
   4. 腸の閉塞・狭窄による通過障害
   5. 心理的負担



● 便秘の種類


 便秘には、主に以下のようなものがあります。

 ● 痙攣(けいれん)性便秘
 便秘と下痢を交互に繰り返す状態の症状を「痙攣性便秘」と言います。
ストレスなどが原因で、便を下に送り出す働きの腸のぜん動運動が、過剰に運動してしまい、腸が痙攣状態になってしまうために起こる便秘です。
若年者や中年者に多い傾向があります。

 ● 弛緩(しかん)性便秘
 加齢や運動不足などが原因で、大腸の筋肉がゆるみ、ぜん動運動が活発に行われないために起こる便秘です。便がスムーズに流れず、長時間腸内に便が滞留したために便の水分が腸壁から吸収されて便が硬くなり、排便しづらくなります。
高齢者に多い傾向があります。

 ● 習慣性便秘
 忙しいなどの理由で、毎日便意を感じたときに排便をガマンした結果起こる便秘です。直腸の神経が鈍くなり、S字結腸から直腸にかけて便が長時間滞留したために、便の水分が吸収され便が硬くなり、排便しづらくなる便秘のことで、直腸性便秘とも呼ばれています。

 ● 薬剤性便秘
 薬の副作用により便秘になることがあります。
原因となる薬剤には、制酸薬・抗コリン剤、抗うつ剤、パーキンソン病治療薬、麻薬(モルヒネ製剤、リン酸コデイン)、咳止め・風邪薬、喘息の薬(気管支拡張剤)などがあります。

 ● 器質性便秘
 癌などで大腸が狭くなり、便が通りにくくなったために起こる便秘です。多くは手術の対象となります。

 ● 過敏性腸症候群
 胃腸や他の内臓に異常がないにもかかわらず、腹痛や腹部不快感などの腹部症状と、便秘や下痢などの便通異常が続く状態です。
30-50歳代に最も多いのが特徴ですが、最近では幼児や小学生、高齢者などにも見られます。
 日常生活におけるさまざまなストレスにより自律神経のバランスがくずれ、腸の動きが過剰になって痙攣(けいれん)することにより下痢・便秘がおこります。また腸にわずかな刺激が加わっただけでも敏感に感じとり痛みとして自覚してしまうために、腹痛がおこります。



● 便秘の対処法


 食事指導や排便トレーニングなどで、便秘を解消するのが基本ですが、それだけでは改善が認められない場合には薬物治療を行います。

 ①. 食事による改善
  1. 水分を積極的に摂りましょう
   ・ 水分不足とならないよう、水分は十分摂りましょう。
   ・ 朝起きがけにコップ1杯の水分を飲むと腸が刺激され便が出やすくなります。
  2. 1日3食、規則正しく摂る。特に朝食をしっかり食べましょう。

  3. 野菜を摂る。
   ・ 食物繊維の多い野菜や海草類、果物などを摂りましょう。
   ・ 食物繊維(水溶性+不溶性)を含む食材を取り入れ、食べやすく調理しましょう
   ・ 食物線維は水分を吸収して便の量を増やしてくれます。
   ・ 目安(1日摂取目標量)は350gです。

  3. 乳酸菌入りの食品を利用しましょう

  4. 適度な油脂を摂取しましょう (腸粘膜を刺激し、蠕動運動を活発にします)

 ②. 生活習慣/運動による改善
  1. 散歩、運動を定期的に行いましょう、毎日継続する事が大切です。
   (腹筋を強化するとともに、新陳代謝の活性化、自律神経のバランスの調整と、
   ストレスが解消されることにより排便が促進されます。)
   ・ 1日20~30分の早足で歩行やジョギングをする。
   ・ トイレを我慢しないようにしましょう

 ③. 薬物による治療

  1. 塩類下剤(酸化マグネシウムなど)
   ・ 体内の水分を腸内に引き寄せ、便中の水分を増やします。

  2. 膨張性下剤(ポリフル、コロネルなど)
   ・ 水分を吸収しゲル状となって膨らみます。
   ・ 便の量が多くなり、排便が刺激されます。

  3. 刺激性下剤(センナ、センノシド、大黄、プルゼニド、コーラックなど)
   ・ 腸の粘膜を刺激してぜん動運動を促して排便します。
   ・ 飲み続けると効かなくなる場合があり注意が必要です。

  4. ビタミン(パントテン酸など)
   ・ 腸を刺激するビタミンを摂取すると排便が促進されます。

  * 薬の使用は、医師の指示に従いましょう

   (内科、消化器内科、胃腸内科、肛門科など)



● 下痢とは


 ・ 下痢とは、水分を多く含む便(水溶便等) が多量に排泄される状態。

 ① 一般的な下痢の原因
   1. 胃腸の機能低下
   2. 刺激の強過ぎる食事
    ・ 冷たい物辛い物油っこい物繊維の固い物
   3. 食べ過ぎ・飲み過ぎ
   4. 感染症(感染性腸炎)
    ・ インフルエンザ、サルモネラ、O-157、ノロウイルス、コレラ、チフスなど 

  《 がん患者さんの下痢の原因 》
   1. がん治療の副作用(抗がん剤投与、腹部への放射線照射等)
   2. 胃腸の機能低下
   3. 刺激の強過ぎる食事
   4. 抗生物質の投与
   5. 感染
   6. 心理的な負担

 ② 下痢の対処法
   1. 水・スポーツ飲料等水分の補給をこまめにしましょう
   2. 症状が落ち着いてきたら、スープやゼリー果物等を少しずつ摂り始めましょう
   3. 食事が摂れそうな場合は、温かく消化の良いものを中心に小盛量から食べてみましょう
   *野菜や果物に含まれる水溶性食物繊維は腸の働きを整えます。
    煮物やスープ等軟らかく加熱して摂りましょう。

   4. 下痢が続く場合は
    ・ 刺激が強い食品は、避けた方がよいでしょう
       固く消化が悪い食品、
       油の多い食品・料理(揚物等)、
       牛乳・乳製品香辛料を多量に使用した食品、
       アルコールカフェインを含む食品・飲料等
    ・ 腹部を温めると、腸管運動の亢進が治まり痛みを和らげ、消化・吸収も促されます。

   5. 重症の場合は・・・
    水分が摂れない場合は、かかりつけの病院にご相談下さい

   (内科、消化器内科、胃腸内科、肛門科など)