肥満やメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)を引き起こす大きな環境要因として「食べ過ぎ」や「運動不足」が挙げられるが、3つ目の環境要因として、膨大な腸内細菌の集まりである「腸内細菌叢(そう)」が関係していることが、ゲノム(全遺伝情報)解析が進んだことで明らかになってきたという。
また、肥満を予防し健全な腸内細菌叢を保つには、欧米型の食事ではなく、伝統的な和食が良いと推奨している。
昨年9月、米科学誌『サイエンス』に掲載された米・ワシントン大のグループの研究論文によると、片方が肥満、もう片方が痩せ形の双子4組を選び出し、腸内細菌が大量に含まれるそれぞれの便を無菌のマウスの腸内に移植。
すると、太ったグループの人の便を移植したマウスは太り、痩せ形のグループの人の便を移植したマウスは太らなかったという。
同論文は、「細菌叢の差違は、肥満の結果もたらされたのではなく、細菌叢の差違が肥満を引き起こす要因になる可能性」を示唆したものとして注目されている。
「腸内細菌叢」と「肥満」の関係についての研究は、米国が先行しているが、日本では「腸内細菌叢」と「免疫疾患」などの関係については、理化学研究所などによる研究が知られている。
腸内には約1千種、総重量で1キロの細菌が存在し、共生しているとされ、近年それらの共生関係が崩れると、肥満・メタボといった代謝性疾患やアレルギーなどの免疫疾患につながるともいわれている。
腸内細菌叢」の共生環境は、普段の食生活が関係していると言われ、共生関係を崩すものとしてはまず、脂肪が多くカロリーの高い欧米型の食事が挙げられる。
高脂肪食を1週間続けただけで細菌叢の構成が変化したという複数のデータがあり、肥満の原因となる細菌は「食事で摂取した糖類などの分解を促進し、体内により吸収しやすい形にする働きがあり、そういう菌が高脂肪食を好み、それを餌に増えるのではないかと考えられている。
その他に、食物繊維の少ない食事や、同じメニューを繰り返し食べることも共生関係を崩す。
いずれのケースも「バクテロイデス」と「ファーミキューテス」という腸内細菌のグループの細菌量が変化して崩れることが判明していて、現時点で最大の予防方法は食事にあるという。
そして健全な腸内細菌叢を保つためには、野菜を含め、さまざまな食材を少しずつ摂取できる伝統的な和食が適しているという。
腸内細菌というと、ヨーグルトの整腸作用が思い浮かぶが、良い作用があるのは確かだとしたうえで、腸内細菌叢全体というレベルから見ると、ヨーグルトを食べただけでは大きな影響を与えられるほどでないとする見方もある。
「ビフィズス菌」などは腸内細菌の中ではマイナーな部類であることや、摂取しても体内にとどまりにくいからだ。
現在、細菌叢の中から優れた菌の組み合わせについての研究などもされていて、将来は「数十の菌を合わせた飲み薬が開発される時代が来る」と期待がされている。
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