2013年2月4日月曜日

立春(りっしゅん)


 今日は「立春」、春の季節の始まりを告げる日で、二十四節気の一つ。 暦の上ではこの日から「立夏」の前日までを『春』と呼ぶ。 『暦便覧』には「春の気立つを以って也」と記されている。

 古くから立春を元旦として「立春正月」を祝う地方もあり、農作業開始の日として重要な日であったと思われる。
 「立春」から数えて88日目が「八十八夜」(雑節の1つ)であり、かっての文部省唱歌の『茶摘み』で「夏も近づく八十八夜、野にも山にも若葉が茂る、あれに見えるは茶摘じゃないか、茜(あかね)襷(だすき)に菅(すげ)の笠(かさ)・・・・・」と歌われたように、この時期に摘まれた新茶は高級品とされ、この若葉の生命力をいただいたお茶を飲むと長生きをするとも言われてきた。
 陽暦(現行暦)の5月1・2日頃にあたり春から初夏へと移る頃で、「八十八夜の別れ霜」のことわざにもあるように、この頃を境に霜がほとんどおりなくなり、農作物への霜の害がなくなる頃とも言われている。
 ただし、このことわざは京都や奈良地方で言い出されたものらしく、西日本の太平洋沿岸、九州、四国地方などは適用範囲と思われるが、中国・中部地方の山間地、日本海沿岸、東日本では「八十八夜の泣き霜」ともいわれるように、ときとして遅霜による被害をもたらすこともある。

 また、210日目を「二百十日(にひゃくとうか)」(雑節の1つ)と呼び、陽暦(現行暦)の9月1日ころで稲が開花し実をつける頃であり、台風の来襲時期でもあるため、暴風雨による被害が少しでもないようにとの願いから風鎮めの祈念(風祭・風鎮祭・風神祭など)が各地で行われていた。
 尚、220日目も「二百二十日(にひゃくはつか)」と呼び、厄日とし警戒され同様に風鎮めの祈念を行う地方もあった。

 気象の上では、「大寒」から「立春」までが一年でも一番寒い頃とも言われ、厳冬期の典型的な「冬型の気圧配置」も立春の頃になるとくずれ始め、日本列島を西から低気圧が周期的に通過して行くようになると、冬の寒さと春の温かさが交互にやってくる、いわゆる「三寒四温」の気候へと変わっていく時期でもある。

 このとき低気圧が太平洋南岸を通過すると、日本海上空の寒気を南に引き寄せることがあり、結果的に関東をはじめ太平洋側に大雪を降らせ、首都圏の交通網が大混乱を起すことがある。
また、日本海沿岸を通過すると、反対に太平洋から暖かい南風を呼び寄せ、各地で気温が一気に上昇することになる。
 特に「立春」以降、初めて吹く南寄りの強風を「春一番」と呼び、もともとは江戸時代より九州地方や瀬戸内海沿岸の漁師たちが、春になって初めて吹く強い南風を「冬」が終わったというしるしとして用いた言葉が、昭和30年代に新聞などで使われるようになり全国的に広まり一般にも使われるようになったともいわれている。

 ちなみに、気象庁の関東地方での「春一番」の定義は、「立春」から「春分」の間で日本海に低気圧があり、強い南寄りの風(風向が東南東から西南西までの間で、風速が8m/s以上の風)で、前日よりも気温が上昇した場合とし、最初の風を「春一番」、それ以降を「春二番」、「春3番」・・・・などと呼ぶこともある。 また、この条件に該当しない場合は、その年は「春一番」が吹かなかったと発表される。

 ただ「春一番」という言葉、俳句の季語にも用いられることもあり、何となく季節感のある情緒的な感じもするが、漁師にとってはこの時期もっとも警戒すべきものとして言い伝えられてきたものである。午前中、好天で穏やかだった海が午後になり一変し、強風が吹き荒れ、海が大時化(しけ)となり、古くより多くの海難事故を引き起こす原因にもなっている。 これは気象予報が発達した現在においても同様である。


 「冬来たりなば春遠からじ」などといいますが、これは英国のロマン派の詩人、パーシー・ビッシュ・シェリー(1792~1822)の書いた「西風の賦(西風に寄せる歌)」の一節、「If winter comes, can spring be for behind ・・・・」である。

 厳しかった今年の冬もようやく峠を越え、すぐそこまで春の足音が聞こえてくるようです。


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