2018年5月27日日曜日

⑯.大山参り蓑毛のみち


(コース概要)

 「小田急・秦野駅」から路線バスで「蓑毛」バス停下車。 蓑毛裏参道から蓑毛越(蓑毛峠)を越え、「大山阿夫利神社・下社」へ参拝し、見晴台を経由して九十九曲を下り、「日向薬師」へと至るコースで、「関東ふれあいの道(大山参り蓑毛のみち)」としても整備されている。 したがって本コースは、大山の山腹を横断するように設定されているため、大山山頂は通過しない。

 「蓑毛」は大山南麓に位置し、「西坂本」とも言われ、西の大山門前町として江戸時代には、17軒ほどの御師(おし)の宿坊があったと言われている。
 蓑毛から大山山頂(阿夫利神社・本社)に至る道は、「蓑毛道」・「石尊道」・「富士浅間道」などと呼ばれ、また大山門前町の「表参道」に対し、「裏参道」とも呼ばれた。

 「表参道」が相模、武蔵、江戸などの東国からの参詣者に多く利用されたのに対して、「裏参道」は、主に小田原などの西相模、伊豆、駿河、東海地方、甲信越地方などからの参詣者の他に、富士講(富士山信仰)などの人々が利用したと言われている。

 かつての大山道(古道)は、「蓑毛」バス停のすぐ近くにある「蓑毛・大日堂」を起点とし、大山の中腹にある「大山阿夫利神社・下社」へ至る道を、「蓑毛道・蓑毛越え・御拝殿道」、山頂の「大山阿夫利神社・本社」へ至る道を、「裏参道・石尊道・富士浅間道」などと呼んでいた。

 今回は「蓑毛」バス停を起点とし、大山山頂(阿夫利神社・本社)を目指す「裏参道」を上って行き、「蓑毛越(蓑毛峠)」手前で山頂へ向かう「裏参道・石尊道」と分かれ、浅間尾根の尾根筋にある「蓑毛越え(蓑毛峠)」を越え、大山東側の山腹を殆ど等高線に沿うようにして大山中腹にある「阿夫利神社・下社」を目指す。

 さらに、「阿夫利神社・下社」からは「日向越え・薬師道」と呼ばれた古道を、二重滝のある「二重社」を経由して「見晴台」まで登り、九十九曲と呼ばれる薬師道の登山口となる「日向ふれあい学習センター」まで下って行くと登山道も終り、ここからは日向林道を「日向薬師」バス停へと向かう約3時間30分の散歩みち。 


(コース)
1.「蓑毛」バス停 →(60分/1.7㎞)蓑毛越
 ・ 「蓑毛」バス停 → (金目川) → 常夜燈・分岐 →  (蓑毛・裏参道) → 林道ゲート  → 石尊道・分岐 → 蓑毛越

2.蓑毛越 →(30分/1.3㎞)阿夫利神社・下社
 ・ 蓑毛越 → (蓑毛道/御拝殿道) → かごや道・分岐 → 登拝門 → 阿夫利神社・下社

3.阿夫利神社・下社 →(35分/1.5㎞)見晴台
 ・ 阿夫利神社・下社 → (日向越え/薬師道)→ 二重滝(二重社)  → 見晴台

4.見晴台 →(85分/4.3㎞)「日向薬師」バス停
 ・ 見晴台 → (日向越え/薬師道) → 勝五郎地蔵  →  (九十九曲)→ 「日向ふれあい学習センター」(登山口) → (日向林道) → 「日向薬師」バス停

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(所要時間)
・約3時間30分/歩行距離:約8.8km (時間/距離ともに参考程度とする)

(備 考)
・記 録:2018年 05月22日
・アクセス:「小田急・秦野」駅(北口)/ 「蓑毛」バス停
      「日向薬師」バス停

(動 画)


●YouTube : 蓑毛・日向薬師散歩https://youtu.be/dLTx4UAgWgE


(16.大山参り蓑毛のみ)





16.大山参り蓑毛のみ/独案内(2018/05/22)

1.起点・「蓑毛」バス停から蓑毛越(蓑毛峠)へ


■ 「蓑毛」バス停から「常夜燈・分岐」へ

▶ 「蓑毛」バス停を起点とし、バス停前の県道(秦野清川線)を横切り、金目川(春嶽沢)に架かる「蓑毛橋」の手前に立つ下社への道標に従い、緩やかな坂道を登って行く。

● 「蓑毛」バス停
 小田急線・「秦野駅」方面へ連絡(神奈中バス)。 飲料自販機、公衆トイレあり。( 尚、「秦野駅」方面バス停は、道路の向い側20~30mほど下ったところにある。)

「蓑毛」バス停
















県道を横切り金目川(春嶽沢)沿いを上って行く
















「蓑毛橋」手前の道標
















「マス釣り場」前を通過

















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(寄り道/参考ルート)

● 旧大山道(「蓑毛・大日堂」~「常夜燈・分岐」)

▶ 「蓑毛」バス停前の県道(秦野清川線)を左へ、金目川に架かる「蓑毛橋」を渡ると「大日堂」の仁王門があり、その右側に小道がある。
 
 古くは「覚王山 安明院」と称し、天平十四年(742)の創建と言われ、奈良時代には七堂伽藍を有する大寺院であったと言われている。境内には大日堂のほか、仁王門、不動堂、茶湯殿、御嶽神社、神楽殿などの建物が残されている。

 境内の右側に小道(旧蓑毛道)があり、大山道の解説碑がある。昔の大山道(裏参道)は大日堂の境内を通り抜け、春岳沢(金目川)を渡り、少し上の常夜燈のところに出たようだ。

「大日堂・仁王門」と右・旧大山道(蓑毛道)跡
















「大日堂」
















「旧大山道・解説碑」
















不動堂石段下の大山道「石尊・不動道」道標
















「茶湯殿」と旧大山道(蓑毛道)跡
















「光西上人入寂地」と旧大山道(蓑毛道)跡
















金目川(春岳沢)沿いの旧大山道(蓑毛道)跡
















金目川(春岳沢)の木橋を渡り対岸へ
















「みのげ茶屋」横の小道を抜ける
















「みのげ茶屋」前で「関東ふれあいの道」コースに合流

















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● 「常夜燈・分岐」

▶ 金目川(春嶽沢)に沿って300mほど坂道を上って行くと、マス釣り場を過ぎた辺りで程なく常夜燈が見えて来る。
 常夜燈は、「大山詣」が盛んだった江戸時代の文化元年に建立されたもので、左へヤビツ峠に向かう「柏木林道」と、右に大山へと向かう「蓑毛道」に分かれる分岐点に建っている。

「みのげ茶屋」を過ぎると、常夜塔が見えて来る
















常夜燈・分岐を右へ
















「関東ふれあいの道」・道標

















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■ 「常夜燈・分岐」から「林道ゲート」へ

▶ 「常夜燈・分岐」からは、林の中の山道へと入り、小さな沢に架かる小橋を渡ると、杉林の石畳の道も少しずつ傾斜を増してくる。
 途中、林道を2度ほど横切り、3度目に迂回してきた林道に出た所で、林道を右へ少し歩くと、左上を浅間山の電波塔に至る舗装された林道が分岐し、車両止めのゲートがある。

小さな沢に架かる木橋を渡る
















途中、林道を2度ほど横切る
















檜林の中の石で舗装された道
















杉林の中の道を上ると林道へ出る

















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■ 「林道ゲート」から「石尊道・分岐」へ

▶ 林道分岐で左上に進む林道の入口に「車両通行止め」のゲートがあり、その「林道ゲート」の右横をすり抜け、坂道を上って行くと、最初の曲がり角に、林の中を登って行く登山道があり、「蓑毛越え」0.7㎞の道標が立っている。

林道を右へ少し行くと、林道分岐に車両止めのゲートがある
















林道ゲートの右側を入る
















林道ゲート・「関東ふれあいの道」道標
















最初の曲がり角で林の中の道へ入る
















小尾根を登って行く
















「蓑毛越え」道標
















小尾根の斜面を登りきると、小さな台地に出る

















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■ 「石尊道・分岐」から「蓑毛越え(蓑毛峠)」へ

▶ 「蓑毛越え」の少し手前、小尾根のやや急な斜面を登りきると、小さな台地に出る。 平坦になった道端に、大山の「百回登山記念碑」と、「関東ふれあいの道」の道標が立っている。

 道標の前をそのまま右へ行く平坦な道は、「蓑毛越え(蓑毛峠)」を経て阿夫利神社・下社(明治維新までは大山寺・不動堂があった)に至る「蓑毛道・不動堂道・拝殿道」で、左上の小尾根の急斜面を登って行く古い石段の道は、大山山頂へ向かう「石尊道・本社道・(富士浅間道)」である。
  
 「百回登山記念碑」には、大正五年五月吉日、静岡県の「新栄講中」の文字が刻まれている。石碑は道標にもなっていて、資料によると「右 拝殿道 左 本社道」とあるが、風化と破損により一部判読不可の状態になっていた。
 
 その時代によって、右の下社(旧不動堂)へ向かう道は「不動堂道・拝殿道・蓑毛越え」などと呼ばれ、左斜面を山頂へと登って行く道は「石尊道・本社道」などと呼ばれていたようである。

 また、古い文献には、「山中で石尊道と不動堂道に分かれる分岐点に「石尊宮一の木戸」あり・・・・云々」と記されたものもあるが、この辺りの事だろうか。
 今はそれらしき遺構も見当たらない。

「石尊道・分岐」から右の平坦な道を蓑毛越え・下社へ
















「百回登山記念碑」と道標

















▶ 斜面の山側に土止めの石垣が続く緩やかな道は、ほどなく浅間尾根の「蓑毛越え(蓑毛峠)」に着く。

土止めの石垣の続く蓑毛道(不動堂道)を下社へ
















大山南陵・浅間尾根の峠(蓑毛越え)へ


















2.蓑毛越え(蓑毛峠)から阿夫利神社・下社へ


■ 「蓑毛越え(蓑毛峠)」から「かごや道・分岐」へ

▶ 蓑毛道は、大山々頂から南北に連なる「浅間尾根」の尾根筋を、東西に横切るようにして蓑毛から下社へ向かう。 浅間尾根にある峠道は十字路になっており、尾根筋を北へ上って行くと、石尊道と合流して本社(大山山頂)に向かい、南に下れば、浅間山・高取山を経由して、矢倉沢往還(現在の国道246号)の善波峠から鶴巻温泉へ至る南尾根道である。

 「蓑毛越え(蓑毛峠)」にはベンチもあり、かっては眼下に秦野盆地や箱根連山を望むことも出来たが、今は木々が視界を遮り、訪れる人も少ない。

峠の休憩所・かっての展望はない
















峠の十字路・道標
















蓑毛越え(浅間尾根)・峠道

















▶ 峠からの道は、大山東側山腹を多少の上り下りはあるものの、ほとんど等高線に沿うように下社へと続く。 山側には、きれぎれではあるが土止めの苔むした石垣が続いている。 
 小尾根をいくつか巻き、斜面の土砂崩れでガレ場の様になっていて足元が少し不安定な箇所や、一ヶ所だけある鎖場の登りを過ぎると、やがて木々の間から下社の社殿が見え隠れするようになる。

 下社までもう少しと言ったところで、左上に向かう「かごや道」との分岐点に到着する。

石垣の続く蓑毛道
















斜面落石注意
















ガレ場・落石注意
















鎖場の上り
















「かごや道・分岐」

















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■ 「かごや道・分岐」から「阿夫利神社・下社」へ

▶ 「かごや道」は、下社・「登拝門」から真正面に山頂へと上る「本坂」の急登を避けるために造られた迂回道で、参拝者が山駕籠に乗って上っていたことから、「かごや道」とも呼ばれていた。 「かごや道・分岐」から100m程で下社・「登拝門」前に到着。
 「登拝門」前を通り過ぎると、下社(拝殿)前の広場に出る。

かごや道・分岐
















蓑毛道・道標
















かごや道・分岐
















蓑毛道
















蓑毛道
















下社・蓑毛側入口
















「阿夫利神社・下社」登拝門前
















「阿夫利神社・下社」表参道(本坂)登拝門
















「阿夫利神社・下社」拝殿


















3.阿夫利神社・下社から見晴台へ


■ 「阿夫利神社・下社(拝殿)」から「二重滝(二重社)」へ

▶ 「下社(拝殿)」前からは、大鳥居をくぐり抜け、石段を下りた所で、茶店前を左奥へ入ると、「見晴台」へ向かう「二重滝道」の近道となる入口がある。

 茶店横の近道入口から石段を下り、「二重滝道」に合流すると、左へ平坦な道を約10分ほど歩くと、「見晴台」への途中に「二重社」の小さな社があり、その左奥に岸壁を2段に流れ落ちる滝(二重滝)がある。

「阿夫利神社・下社」大鳥居
















「下社」大鳥居下・石段(表参道)
















「二重滝道」分岐・石段下の茶店手前を左へ
















「二重滝道」入口・茶店の左横奥へ
















「二重滝道」入口・道標
















「二重滝道(日向越え)」・近道合流
















「二重滝道(日向越え)」・道標
















「二重滝道(日向越え)」

















● (二重社・二重滝)
 明治維新までは、大山寺の「倶利伽羅竜王堂」が祀られていた。倶利伽羅竜王は不動明王の化身とされ、竜神あるいは水の神(雨乞いの神)として信仰された。
 明治維新の廃仏毀釈により、「高龗神(タカオカミノカミ)」祭神とする二重社となった。
 「高龗神(タカオカミノカミ)」は、大山山頂にある前社にも祀られており、古くから
水の神、止雨・雨乞いの神として信仰され、京都の「貴船神社(きふねじんじゃ)」が有名である。

 大山も「雨乞いの山」として知られ、二重滝も「雨乞いの滝」とも呼ばれ、農家などの降雨を願う参拝者は、この滝から汲んだ水を雨乞いの御神水として持ち帰ったと言う。
 ちなみに、下社・拝殿の下にある「御神水」は、この「二重滝」上部の湧水を引水したものらしい。

「二重滝道(日向越え)」
















「二重滝」
















「二重社」

















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■ 「二重滝(二重社)」から「見晴台」へ

▶ 「二重滝(二重社)」から、さらに急斜面を横切るようにして歩道を20~30分ほど上って行くと「見晴台」に到着する。

「二重滝(二重社)」から「日向越え」見晴台へ
















「日向越え」・見晴台へ
















「日向越え」・見晴台へ
















「日向越え」・見晴台へ

















● 「見晴台」(標高:770m)

 杉林の中の斜面を上って行くと、尾根筋に延びるなだらかな台地状の広場に出る。

 「見晴台」と呼ばれ、正面には大山山頂へと至る「雷ノ峰尾根」が延び、右へ尾根筋を下って行くと日向薬師方面へ至る分岐点でもあり、東屋風の休憩所と木製のテーブルやベンチが並び、休日には多くの登山者で賑う所でもある。

 昔は、名前の通り茅の茂る尾根で、遮るものもなく眼下に広がる相模平野を望むことができたと言うが、現在は植林された杉林に遮られ、紅葉シーズンの山頂方面から東方に連なる三峰山方面の展望を楽しむのみである。

「見晴台」
















「見晴台」・雷ノ峰尾根(大山山頂方面)
















「見晴台」・道標


















4.見晴台から「日向薬師」バス停へ


■ 「見晴台」から「勝五郎地蔵」へ

▶ 「見晴台」からは、右の東屋風の休憩所横を抜け、尾根筋を「日向薬師」へと下って行く。 風が吹き抜ける雑木林の尾根道が杉林のなかの平坦な道へと変わり、「日向キャンプ場」・分岐の道標を通り過ぎると、ほどなく木立の中にぽつんと立つ石地蔵が見えて来る。 等身大ほどもある地蔵尊は、江戸時代末期の嘉永6年(1853)に建てられたのもで、製作者である石工の名を取り、「勝五郎地蔵」と呼ばれている。

 勝五郎は、信州・高遠の石工で、この地に移り住み、伊勢原市周辺には勝五郎が造ったと言われる石造物が数多く残されている。 

東屋風休憩所・横を抜ける
















「見晴台」から日向薬師へ尾根筋を下る
















「見晴台」から日向薬師へ尾根筋を下る
















「日向キャンプ場」・分岐
















「勝五郎地蔵」
















「勝五郎地蔵」
















「勝五郎地蔵」・道標

















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■ 「勝五郎地蔵」から「薬師道・登山道口(日向ふれあい学習センター)」へ

▶ 「勝五郎地蔵」からは尾根筋を離れ、左へ斜面を下って行く。 人工林の杉林の中を九十九折(つづらおり)に下って行く坂道は、「九十九曲り」とも呼ばれ、30分ほど下ったところで伊勢原市の「日向ふれあい学習センター」の建物脇の「日向薬師道」登山道入口に出る。

「勝五郎地蔵」
















「九十九曲り」の下り
















手摺のある石段を下り、途中で「日向林道」を横切る
















「日向林道」出合で林道を横切る
















「日向林道」出合・道標
















「日向ふれあい学習センター」裏の沢に架かる木橋を渡る
















「日向薬師道」・登山口
















「日向薬師道」登山道入口・道標
















「日向薬師道」・登山口

















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■ 「薬師道・登山道口(日向ふれあい学習センター)」から「日向薬師」バス停へ

▶ 「日向薬師道」は、江戸時代より「大山詣り」で、甲斐(山梨県)や津久井方面からの参拝者が、宮ケ瀬、清川、七沢を経て、日向薬師、石雲寺、浄発願寺を参詣し、大山へ詣でる「大山道」でもあった。

 「薬師道・登山道口」から「日向林道」(舗装道路)を少し下って行くと、左に渓流(日向川)に架かる小橋に下る歩道がある。 旧浄発願寺へ至る道で、山中の参道跡を15分ほど上ったところに、昭和13年の山津波で流失した旧浄発願寺の遺構が残されている。

「日向林道」

















● (一の沢・浄発願寺跡)

 渓流(日向川)に架かる小橋を渡ると、広場の奥に大きな宝筐印塔・五輪塔・地蔵尊などが並んでいる。「一の沢・浄発願寺」の山門跡で、これより石段を15分ほど上った山中に、昭和13年の台風による山津波で流失した本堂や庫裡の遺構だけが残されていて、現在は「浄発願寺・奥の院」と呼ばれている。
 さらにその上部には、開祖・弾誓上人が修行したいう岩屋があり、歴代住職などの数多くの無縫塔(むほうとう)が立ち並んでいる。

 かつて、陰暦10月に三日三晩をかけて行われる「御十夜法要(おじゅうやほうよう)」では、本堂、庫裡に多くの信者があふれ、鎌倉の「光明寺(こうみょうじ)」・平塚の「海宝寺(かいほいじ)」と合わせ「相模の三大十夜」と呼ばれるなど、昭和の初期まで盛大に行われていたと言う。
 麓にある七沢などの古道には、「一の沢、一の沢道」などと刻まれた道標を見かけることもあり、一の沢と言えばここの「浄発願寺」を指す名として知られていたようである。

旧浄発願寺(奥の院)・入口

















▶ 旧浄発願寺(奥の院)・入口からレストラン「クワハウス・山小屋」を過ぎ、日向渓谷(日向川)に架かる「梅が尾橋」を渡ると、渓流釣り場の先、左に石雲寺の山門がある。「雨降山 石雲寺」という曹洞宗の古刹で、寺伝によれば、奈良時代の養老2年(718)に華厳妙瑞法師により創建されたと言われている。

「クワハウス・山小屋」
















梅ヶ尾橋・日向渓谷

















● (石雲寺)

 「雨降山 石雲寺(うこうざん・せきうんじ)」という曹洞宗の寺で、奈良時代、霊峰大山の中腹に華厳法師が紫雲に導かれて開いたと伝わる古刹である。
 山号は、大山にある「大山寺」と同じ「雨降山」で、寺伝によれば今からおよそ千三百年前の養老2年(718)、開祖である華厳妙瑞(けごんみょうずい)法師が、大友皇子の菩提を弔うために一寺を建立したのが始まりとされ、開基は大友皇子と言われている。

「石雲寺」・山門
















「石雲寺」

















▶ さらに日向山荘を過ぎ、「御所の入り」と言う所で、右へ入る道が分岐し、 日向川の橋を渡り、林に囲まれたなかに「大友皇子の墓所」と伝わる五層の石塔がある。

「御所の入」・伝大友皇子墓所分岐

















● 「伝・大友皇子の墓所」

 古くは総門下の渓谷(日向川)の対岸(「伝・大友皇子の墓所」附近)に位置していたが、後に現在の場所に移築されたと言われ、古地図には「雨降院跡」と記され、 「皇子の墓地跡」とともに、戦前は宮内省の所領でもあったようである。

 大友皇子は、天智天皇の第一皇子であったが、天皇が崩御した後に叔父である大海人皇子(おおあまのおうじ・後の天武天皇)との王位継承をめぐる争い(壬申の乱・672年)に敗れ、自害したと言われている。

 その御陵は、滋賀県大津市御陵町の「長等山前陵(ながらのやまさきのみささぎ)」とされているが、壬申の乱に敗れた後、妃や子女を伴って密かに東国へ逃れたとする伝説などが広まり、愛知県(岡崎市小針町/西大友町)や千葉県(君津市・白山神社古墳)、神奈川県(伊勢原市日向)などには、大友皇子の御陵だという伝承が幾つか残されている。

「御所の入」・道標



















「伝・大友皇子の御陵」




















▶ 「御所の入り」の分岐を過ぎると、日向川の対岸に「浄発願寺」の三重塔が見えてくる。 「日陰道」古道の分岐を過ぎると、山間の渓谷も開け、日向薬師の集落に入る。

浄発願寺・道標

















● (浄発願寺)

「無常山 浄発願寺(天台宗・弾誓派本山)」と言い、慶長13年(1608年)、木喰僧・弾誓(たんせい)上人により開山。
 もとは、ここより1kmほど上流の「一の沢」の山中にあったが、昭和13年の台風による山津波で崩壊、その後の復旧は困難であるとして、昭和17年(1942年)この地に移転し、再建された。 また旧浄発願寺跡は現在、「浄発願寺・奥の院」と呼ばれている。

「浄発願寺」
















「浄発願寺」
















「日陰道」・分岐

















▶ 日向の集落に入り、道が大きく曲がったとろで、左側に「薬師林道」が分岐している。 「薬師林道」・分岐から約300m、棚田の広がる緩やかな坂道を下って行くと、右側に「日向薬師」バス停がある。

「薬師林道」・分岐道標、バス停まで約300m
















「関東ふれあいの道」・道標
















「薬師林道」・分岐を通過し、バス停へ
















彼岸花の名所、「日向薬師」の棚田風景
















「日向薬師」バス停へ緩やかな坂道を下る
















坂道の右側に「日向薬師」バス停がある
















「日向薬師」バス停

















● 「日向薬師」バス停(終点)
 小田急線・「伊勢原駅」方面へ連絡(神奈中バス)。 小さな売店があり、平日はお休みの時もある。飲料自販機あり。 バス停広場の向い側に公衆トイレあり。

「日向薬師」バス停
















「日向薬師」バス停